2019年3月3日、札幌市主催の人材育成事業「まちでちょいチャレ」の活動の一環として、
「わくわくトークセッション(キャリアコンサルタント編)」が開催されました。
元々、“わくわくトークセッション”は「キーパーソン21の日」として
キーパーソン21の本部で開催されていましたが、北海道支部では初開催となります。
「キーパーソン21の日」:
自分を見つめ直すことで、自ら動き出さずにはいられない、あなた自身の『わくわくエンジン』を考え、自分らしく、そして、主体的に人生を選択していくヒントを探すイベントです。
チーム北海道、初開催の今回は、
・自分がやりたいことってなんだろう、仕事におもしろみを感じない、 今後のキャリアをどうして良いかわからないなど、モヤモヤした思いを抱えている方
・子どもや身近な人のキャリアを考えるヒントにしたい方
を対象に、キーパーソン21の会員でもあるキャリアコンサルタントの光田恵子さんとトークセッションを行いました。
そのトークセッションでは光田さんのこれまでをお聞きしながら、自分をどうやって見つめ直し紐解き、わくわくエンジン®へと繋げていったのか、を皆様にお伝えできればと思います。ぜひお読みください。
【わくわくトークセッション(キャリアコンサルタント編)】
パネリスト: 光田恵子さん
京都生まれ。客室乗務員の経験を経て、現在キャリアコンサルタントとして、専門学校や職業訓練の講師を務める。フリーの講師をする傍ら、法律事務所の事務員を始める。子ども3人の5人家族。
キーパーソン21会員6年目。キャリアカウンセラーのメルマガでキーパーソン21の活動を知り、子どもが自ら動き出すようなエンジンを探すお手伝いをする活動に共感し入会。
「どんなところでもいいから就職しないと」
インタビュアー:最初に就いた職業が客室乗務員とのことですが、いつごろからなりたいと思っていたんですか?
光田:最初から客室乗務員になろうと思っていたわけではないんです。私の時は就活が困難な時代でした。ただ、私は就活する時も、大学を決める時も、浪人せずにきちっと決めるのが大事だと思っていたんです。自分の家族の中での役割を思うと、「どんなところでもいいから就職しないと」と思い就活していました。それで、はがきを100枚以上書いたんだけど、通ったのは2社だけで、たまたま最後に残っていたところが、その会社でした(笑)
インタビュアー:客室乗務員になった時は、どう思いましたか?
光田:まさか受かるとは思っていませんでした。周りや家族にも、面接の最終試験くらいで、「わたし、もしかしたらスチュワーデスになるかもしれへんで」と言ったくらいで(笑)「客室乗務員になる」という夢を描いていたわけではなかったし、「海外にも行けるし楽しいだろうな」というイメージはありました。でも、100社中の2社ということで、私を取ってくれた大事な企業だと思っていました。
「楽しいな」と初めて思えました
インタビュアー:海外に興味があったんですか?
光田:そうですね。大学も外国語大学でした。
インタビュアー:では、学生のころから、海外で働くとか国際的な仕事に興味があったんですね。
光田:小学6年生の時に英語の塾に通っていたんです。それがすごく楽しかった。私は暗記がすごく得意で、それで英語の単語を覚えるのが楽しくて、やればやるほど先生が褒めてくれた。勉強は好きじゃなかったけど、「楽しいな」と初めて思えました。そして、やればやるほど点数も取れたんです。自己肯定感が上がったのも、これが初めての経験でした。
中学2年生の時にはアメリカに行きました。初めての外国で、外国の方で触れ合うことで世界が広がりました。特に、国連で働いていた女性を見て、「かっこいい」と思いました。それ以来、「国際」とか聞くとかっこいいと思うようになりました。そのまま、高校も英語コース。大学も外国語大学を選びました。その頃はおぼろげにかっこいいなと思っていました。
インタビュアー:働く女性がかっこいい?世界を舞台に働くのがかっこいい?
光田:働いている方も素敵だと思いました。けど、全く知らない方々と触れ合えるのが、それが言葉も文化も違う方々というのに惹かれました。
「この仕事を続けていって何になるんだろう」
インタビュアー:客室乗務員だった期間は6年だそうですが、働いていた時はどうでしたか?失敗しちゃったこととか、楽しかったこととか。
光田:はじめの内は、仕事に慣れなかったので小さな苦労はたくさんありました。だけど、色んなところに行けたから楽しかった。プチ旅行ができるのは醍醐味ですね。学生のころ、接客業をしていて、すごく楽しかったので、お客様へのサービスの時間も楽しかったです。
でも、2年目くらいでだんだん慣れてくると、仕事がすごく面白くなくなってきました。ただお客さんをお迎えして、食事や飲み物を出すだけの仕事に思えてきたんです。仕事に楽しさを見いだせなくなっていました。「この仕事を続けていって何になるんだろう」と思っていました。
ある日、お客様に飲み物を出していたんですが、フライト後に、お客様から「客室乗務員の態度が悪くて、気分が悪くなった」というクレームを名指しでいただきました。それが一番大きい失敗ですね。確かに、お客様に目も気持ちもいっていなかったんです。昔、接客業をしていたときは、お客様に合わせてちょっとした工夫をやっていました。それが楽しかったし、接客が得意だと思っていただけにショックでした。そしてその時に、私を育ててくれた大事な先輩の顔にも泥を塗ってしまったと感じ、そっちの方が辛かったです。
「6年間客室乗務員をやってきたけども、何もできないな」
インタビュアー:客室乗務員として6年働いて退職を決断したきっかけは?
光田:クレーム以降、自分を見つめ直して仕事も楽しめるようになってきました。その後、マネジメント層になってやることも変わって、対お客様だけでなく、仲間に対しても影響を与えられるようになって、ますます仕事が楽しくなっていて「辞めたくないな」と思っていました。
結婚をしても辞めたくなくて、仕事を続けていました。夫は九州、私は関西で1年半くらい離れて暮らしていましたが、夫にも「仕事を辞めてくれ」と言われたことは無かった。ただ、自分が描く家族像を考えた時に、離れて暮らすというのはフィットしないと思って、半年くらい悩んで辞めました。
インタビュアー:退職をきっかけに、どう変わりました?
光田:夫と過ごせる時間は増えました。そして、子どももいなかったので、私も働こうと思いました。その時に、「6年間客室乗務員をやってきたけども、何もできないな」と思いました。自分なりに一生懸命に働いてきたつもりだったけど、普通の人が持っているようなパソコンができるとか、そういうことも私にはできなかった。そんな私を雇ってくれるところがあるのかと思いパソコン教室にも通いました。そういうふうに悩んでいた時に出会ったのが、キャリアコンサルタントの資格でした。その資格を取得して専門学校に就職しました。
インタビュアー:キャリアコンサルタントのどこに惹かれたんですか?
光田:何を選択しても自分の中にしか答えが無いというか、思い悩んだりどうしようかなと思った時に、誰かにアドバイスを受けたりするよりは、自分の中で答えを見つけて選んでいくしかない、というキャリアコンサルタントの考えに惹かれました。私は何もできないなと思っていたけど、よく考えると他の仕事や分野で活かせることが私にも身に付いているかもしれないというきっかけになった。
インタビュアー:新しい仕事はどうでしたか?
光田:未知の分野で楽しかったです。新しいことを習ったりとか自分の世界が広がった時に喜びを感じました。
インタビュアー:これまでの話とつながりますね。そういうことにわくわくするんですかね?
光田:この人どんな人なんだろうとか、いろんな人がいる中で楽しめるタイプです。
自分の思い通りにしようとしている自分に気づいた
インタビュアー:子育てをしてみて、自分が変わったと思うことはありますか?
光田:変わったというかすごく勉強になります。子育ては、やってもやっても実を結ばない。仕事だと頑張れば頑張るほど結果が出て、やりがいにつながるけど、子育ては全然うまくいかない。自分は「ねばならない」にとらわれがちで、一人目が生まれたときには、いろいろ育児書を読んで、母乳は何時間ごとにあげて、何歳のときにはこういう風にしてと、本で読んだ通りにやっていました。2人目からはそれがどんどん外れていったんですが。
インタビュアー:どうにもならないっていうことを受け止めたから?
光田:自分の思い通りにしようとしている自分に気づいたんです。「こうあるべき」「こうじゃなきゃいけない」の考えに悩んでいました。だけど、こう考えるから苦しいのであって、そうじゃないのかもしれないと思い始めて、そう考えていた自分から開放されていきました。
インタビュアー:開放されて楽ですか?
光田:そうですね。ただ、大事なところは忘れないでおこうと。自分のこだわりとか価値観を捨てたりとかはしません。そこはぶれないように持っていたいと思っています。だけど、私の思い通りに人は動かないのも同時に思っています。そういう風に受け入れられるようになってすごく楽になりました。
「大人になったとき、老人になったとき、
あなたを支えてくれるのは子どものころのあなた自身です」
インタビュアー:最後に一言お願いします。
光田:私がキーパーソン21で活動している理由は、作家の石井桃子さんの言葉「大人になったとき、老人になったとき、あなたを支えてくれるのは子どものころのあなた自身です」っていうのがすごく好きだから。大人になると、本をたたんでしまっておくような感覚で子供の頃の思い出を普段はしまっている。それが、ふとした瞬間にぱらっとページがめくれて、その頃の一コマが思い出されて、その時の情景や思いや空気や香りまで思い出されるようなことがあるんです。それが私を作っているんだなと思うし、それが今の私に繋がっていると思うときがあります。すべての子供達の1ページ1ページが豊かな経験で埋まっていくようになれば、将来大人になったときにそれを振り返って、主体的に選択して生きていけるのではないかと思っています。大人にできることとして、子どもたちの存在を認めてあげて、成長に寄り添っていくことができたらいいと思ってキーパーソン21にいます。
自分のわくわくエンジンは、今のところ、人の成長や感動の場面を共有すること。私が与えるというのではなくて、その人が感じたその時の感動とか「成長した」という思いを共有することが私にとってのワクワクエンジンかなぁ。キーパーソン21のプログラムをやったりとか、こうして理解ができる大人を増やしていったりすることで、子どもたちが主体的に生きていく、大人自身も主体的に生きていくようになる。そうなると自分も他人も認められるひとが増えていく。そして、この世界が明るくなって、ちょっとずつだけどつながっていくんじゃないかな。西川きよしじゃないけど、「ちっちゃなことからコツコツと」という思いでやっています(笑)この活動もちっちゃな点だけど、それがつながって線になっていけばいいなと思っています。