■日時:2013年6月15日(土)14:00~17:40
■会場:川崎市産業振興会館
■内容:
1.基調講演「自殺しない心、自立したくなる心」香山リカ氏
2.パネルディスカッション
コーディネーター:江口歩氏
パネリスト:香山リカ氏/月乃光司氏/渡邉幸義氏
3.支援団体との情報交換会(自由参加)
6月15日川崎市産業振興会館にて2013年度チャリティカレッジ『子どもたちの明るい未来のために「若者の自殺と自立を考える」第一回』を開催いたしました。
85名もの方にお申し込みをいただき、開催の主旨に賛同いただいた6団体が参加されました。
当日の様子をプログラムごとにご報告いたします。
1.基調講演 香山リカ氏「自殺しない心、自立したくなる心」
現場での豊富な研究・臨床経験を元にお話しをいただきました。
まず、日本では15歳から39歳までの若年層の死因の第一位が、事故や病気ではなく自殺であるというかなり衝撃的な事実が紹介されました。かつては精神的なつらさや死にたい気持ちを訴えて受診する人にはうつ病や神経症等の診断が下され、病名が付けばそれに応じた治療が可能でしたが、最近は明確な診断が困難で漠然と「生きづらさ」に苦しむ人が増えてきているとのことでした。
充実した毎日を生きているように見える若者が、その裏側では生きづらさを抱えている背景にはさまざまな要因が考えられるとしながら、その中から今回香山氏が挙げたのは次の二点でした。
「自分らしさ」のハードルを自分で上げてしまい、誰もが認める才能や成功を求めるあまり、身の丈に合った現実的な目標や生活を受け入れられなくなっていること。そして、多くの若者は自分に自信がなく、親や先生の期待に応えているか、周囲にどのように思われているかということを気にしては「自分なんかいない方がいい」という意識に苛まれている、ということです。
香山氏は、「(特別な才能や成功を示さなくても)あなたはあなたであるだけで大切な存在だ」という無条件の承認が、大人は伝えているつもりでも実は若者には伝わっていないと指摘します。社会や大人は、若者に対してまず無条件の承認を伝えつつ適度な距離感で、特に親はきちんと子離れをして、その自立を促していく必要があることを強調して香山氏は講演を締めくくりました。
参加された方からは、
「自己肯定感が大切なことがわかりました。」
「ハードルをあげて自分を追い込んでしまう若者は大人が作り出しているのだと思いました。様々な価値観を認めたりありのままでもOKといえるような社会を目指したいと思いました。」
「自殺したくなる人の心が少しわかった気がしました。自分は経験上見捨てられたのかと感じていたので少し楽になりました。」
「すごいチャーミングでした。最初の話題提供といい、区切りのないすそ野が広がって生きているということを実感しています。大変わかりやすく。お話しいただきました。」といった声をいただきました。
パネルディスカッションでは、ともすると重くなるテーマを、江口様をはじめ、香山様、みなさまの力で、病院現場での声や当事者の思いを伺いながら、楽しいかけあいもあり、身近な話しに感じ、明るく前向きに、でも真剣に受け取ることができました。
2.パネルディスカッション 質疑応答
登壇者それぞれが既に旧知(香山氏と渡邉氏は初対面)ということで、江口氏のコーディネーションのもとたいへんフランクかつ楽しい雰囲気で進行しました。かつて自殺未遂繰り返した月乃氏は、同じダメさをさらけ出せる環境と仲間を得ることで生きられるようになった経験を語り、子どもの頃にこそ世の中的には(成功や栄光だけではなく)ダメな方向であっても楽しく生きている人々を見せてあげる必要があると主張。
香山氏も、日本は「すべり台社会」でひとつ何かを間違うと一直線に加速的に落ちていくが、本来人生は複線的なもので何かが違った時点で別の選択肢を選んで進んでいけるはずと述べました。「20大雇用」で障がい者や引きこもりなど就業困難者の就業機会の創造に取り組んでいる渡邉氏は、かわいそうだからではなく働く意志があるから雇っているのであり、意志があって環境さえ整えれば就業困難者でも問題なく働けると力説しました。
質疑応答では、今回の登壇者のようなそれぞれの立場や専門家(医療、NPO、企業)が横の連携を持つことの重要性や、生きづらさやその状況の理由を探すよりも現実をどう生きるかに方向転換することで生きやすくなる、着地点を見つけていくこと等が回答として挙げられました。
その後、参加支援団体のブースでは登壇者や支援団体のメンバーと来場者による情報交換が行われ、盛況のうちに全プログラムが終了しました。
参加された方からは、
全体に対して
「パネルディスカッションを聞いて肩の荷が下りたような楽な気持ちになった」
「多様な価値観を認める大切さを感じました」
「楽しみながら様々な視点を得ることができてよかった」
「重くなりがちなテーマも枠を取り払って本音でしかも笑いの要素を盛り込んで活動していけば理解も共感も深まると感じました。」
「とても楽しく聞かせていただきました。それぞれの立場で、でもあまり力まずに問題に取り組むことがとても自然に思えて感心しました」
月乃氏に対して、
「月乃さんのことばやパフォーマンスが心に響きました」
「月乃さんの”仲間”、詩にとても感動しました。詩の最後の方は涙が潤みました。」
「感動して気付いたら涙があふれてとまらなくなっていました」この言葉が多数でした!
渡邉氏に対して、
「22大雇用の話しがとても興味深かった。障がい者がそんなにたくさんいる企業が利益をだせる仕組みを作っていることが素晴らしい。非正規でも楽しく生きられることを示してあげることが大切。」
「渡邉さんの企業経営の実例(スイッチをどう入れるのか)を詳しく聞きたい。他の企業でもまねることができるのか?」
江口氏に対して、
「非常に重いテーマをとても楽しく拝聴できました!江口さんのコーディネートとパネリストのコラボがよかった」
「パネルディスカッションはとかくつまらなくなりがちですが、こうした方法や司会者のキャラクターによってはうまく回るものだと思いました」
参加されたみなさまの終始熱く真剣なまなざし、時に笑い、時に涙を流し終了後も興奮して、楽しそうに語り合う様子、そしてアンケートに書かれていた言葉から、喜んでいただけた様子が伝わってきました。
9月28日(土)の第二回にも既に多くのお申し込みをいただいており、盛り上がりが期待できそうです。お申し込みがまだの方は是非この感動をご体験ください。
http://www.keyperson21.org/article/14770395.html