東京都市大学×キーパーソン21コラボイベントレポート
未来に自分をどう生かす?
わくわく学生創出会議2017@二子玉川夢キャンパス
3月20日春分の日…東京都市大学二子玉川夢キャンパスで今年も、キャリア教育を本気で考える東京都市大学と認定NPO法人キーパーソン21、そして地域のみなさんの「わくわく学生創出会議」が開催されました!
学生たちがリアルな思いをプレゼンし、各界最先端の人材育成の現場におられる皆様がパネラーとして登壇。小学生から80歳まで122人が、本気のディスカッションを展開しました。学生たちと、産学官NPOのキーパーソンたちが熱く語った人材育成会議レポートをお送りします。
発表学生:東京大学、早稲田大学、専修大学、清泉女子大学、都市大学
パネラー:パリバ銀行日本本部長、キャリア教育アワード受賞博報堂、経済産業省産業人材育成担当、東京都市大准教授
オープニング:東京都市大学がキーパーソン21とコラボする理由
企業から選ばれるだけでなく、学生が仕事を選び、創る時代。東京都市大学企画室部長、浦田充起さんは、大学のキャリア教育推進にキーパーソン21のノウハウが大きな力になっていると語ってくださいました。
「学生コミュニケーターによるワークショップが地域や子どもたちに向けて活発に展開される東京都市大学二子玉川夢キャンパスを会場に、世代を超えた人々が集い、語り合う。羅針盤のない時代にこんな機会が全国に広がることが、今とても求められています。」
問題提起:どのようにすれば自分を活かして、いきいきと生きていけるか?
そして代表理事・朝山より、推測しきれない未来社会を私たちはどう生きればよいのかという問題提起がなされました。
16年間の活動を経て朝山の得た一つの解は、「自分が何者であるか(アイデンティティ)を語る力」「互いのアイデンティティを認め合う中で、協働のコミュニケーションをする力」の2点を育んでいくこと。これらにより、子どもたちは自分の中に羅針盤を持って生きていくことができ、どんな社会が来ようと自分軸を持って強くしなやかに主体的に生きてゆけるのではないかということです。
日本の若者は成長過程で自分を肯定的にとらえる経験が少なく、自己肯定感が非常に低いという特徴があります。しかし一方で「日本のために役立つと思うようなことをしたい」という若者の割合は、7か国中トップ。さて、これは何を意味するのでしょう。
今日の学生の話しを受け止めて、一旦持ち帰っていただきたい、そして「自分になにができるか」を考えて、アクションを起こしてほしい。すべての人がキーパーソンなのです。
キーパーソン21とは?
「高校へは行かない」と学校崩壊中の長男の発言から、3人の子を育てる母親として2000年12月、NPOキーパーソン21(KP21)を立ち上げました。すべての子どもたちが、自分を活かしていきいきと生きていってほしい。16年間にわたってこのメッセージは多くの共感者を呼んでいます。あらゆる立場の大人たちが手を取り合って本気で子どもたちに向き合い、オールジャパンで子どもを育てる。今ある枠を超えて未来をつくる。未来を創る人をつくる。そんな社会が、KP21が描く理想の社会です。
続いて、7人の学生たちが4つのブースに分かれ、自分の考え方や価値観について発表。参加者は、自分が興味を感じる学生のブースに足を運びました。
学生講演:
わくわくエンジン発見!アクションを起こした7人のプレゼンテーション
河内智尋
早稲田大学文学部3年
行動した、その先にあるもの
小さいころからスポーツ大好きで、高校では未経験の野球部に所属。珍プレーを繰り返しながらも乗り切る力を学んだ。大学では様々なことにチャレンジしている。塾や家庭教師のアルバイト。成績が上がって喜ぶ生徒を見るのがうれしい。その家族に招かれた高級焼き肉屋で、生で焼き肉を食べるという流儀に触れて衝撃を受けた。表現したいという意欲から、NHKの歌のお兄さんのオーディションを受けたり授業内プレゼンで工夫したり、チャレンジを重ねている。言葉や文字を使って表現するというわくわくエンジンをたずさえ、
現在、生きにくいこの世の中をどうわたっていけばよいか探索中。
ちひろのわくわくエンジン:公の自由な場で、言葉や文字を使って表現すること
國井佳那
清泉女子大学文学部3年
目指せ!最強じゃなくて、最高!
高校ではダンスに熱中し優先してきた。厳しい部活の中で、代々受け継がれてきた全国大会受賞を目指し戦ってきたが、栄冠を逃す事態が起きる。この悔しさをバネに、先生や仲間と本気で向き合い最後の大会にて全国大会受賞を果たした。大学では競技ダンスに一目ぼれし、再び全国出場の夢を見る。しかし何でもかんでも上を目指し、強がる自分の姿に気がついた。夢のために大切なのは「最強」(強がること)じゃなくて「最高」(自分自身を高めること)なんじゃないか。そして今、いつの日か教師になれるよう、文学部で表現を学びつつも、様々なことに挑戦し自分の幅を広げている。
くにかなのわくわくエンジン:120%の情熱と想像で表現し続けること
渡辺佳奈
専修大学文学部3年
はい次!で乗り切れた、これまでのわたしとこれからの私
受験に失敗したり、アメリカ留学で壁にぶつかったり。節目で困りごとがあると、父はノートに整理しながら話を聞いてくれた。母は何でも受け止めてくれた。頼れる家族の存在。中学校や予備校時代に響いた学校の先生たちの言葉。いま就活に悩み、何をして社会貢献すればいいのか決めきれない自分がいる。これまでは用意されたメニューから選べばよかった。「はい、次!」は魔法の言葉だった。これからは…第三の大人に出会える家族会議のような場所、社会で話し合える環境を作りたいと思っている。
わたかなのわくわくエンジン:
人と目標に向かって話し合い、協力してみんなで達成感を味わうこと
橋本憲明
東京都市大学工学部3年
この社会で私がしたいことを見つけたい
この夢キャンパスで、コミュニケーターのリーダーを務めている。父が厳しかったせいか自己肯定感の低かった子ども時代。高校時代の先生には理不尽な思いを持つ。しかし大学以降は第三の大人との出会いに恵まれ、いろんな人のいろんな価値観が存在していることを知った。夢キャンの浦田さん、キーパーソンの大人たち、ハーバード大学での剣道合宿中の体験。自分の行動が他者へも影響すると分かり、起業家スクールでも学びを深めた。そして解決したいことがおぼろげに見えてきたと感じている。枠を超え、みんなを元気にする人になりたいと志す。
はっしーのわくわくエンジン:
知らないことにたくさん触れて、集中して、成り立ちを理解し、新しいものをつくること
角田将太郎
東京大学教養学部3年
一億総哲学者社会に向けた僕の取り組み
弱気で運動が苦手なのに父にノックでしごかれ、小学校野球部のキャプテンになった。父の厳しさから逃れたかった。リードだけが取り柄の背番号12はそれでも野球を続け、ついに高校でキャッチャー・背番号2をつかむ。家では、相手の気持ちを考えない父に家族が苦悩する姿を見ていた。どうすれば人の気持ちがわかるのか。当初脳神経科学を志し東大理Ⅱ類に入ったが、ある先生に出会ったことがきっかけで哲学の道に進む。子どもの気持ちが知りたくて教育系サークルで活動。利己的な考えから一歩出て、思いやりの気持ちを持てば解消できる問題は多いのではないか。誰もが幸せになってほしいから、哲学で起業したい。立ち止まる機会が皆に与えられる社会、「一億総哲学者社会」の実現を目指す。
しょうちゃんのわくわくエンジン:相手の気持ちがわかる人を増やすこと
望月那菜
専修大学文学部4年
人に頼ることで自立する。人に頼ることで見えてきたこと
我慢強い、よい子だった。一生懸命働く母に迷惑をかけてはいけないと、なんでも一人でやろうとしてきた。高2の頃いろんなことがあって不登校気味に…その時吹奏楽部の友達が「私に頼ってよ」と言ってくれたのが泣けるほど沁みた。考えなくすべてを相手に頼るのは依存でしかない。大切なのは自分に何が足りないかが判り、意思を持ってSOSを出すことだ。それが自立につながると思う。キーパーソン21での第三の大人たちとの活動から、子どもたちの輝ける場を作りたいと強く思うようになり、この春高校教師になる。
ななちゃんのわくわくエンジン:
いろいろな人と関わる中で、そのすべての人がありのままに輝ける居場所をつくること
多養和剛
専修大学経営学部4年
自分から動き出す大切さとは?
幼いころから何度となく言われ続けた「おまえ、ばかじゃん」「つまらない」という言葉に、平気なふりをしたが心は深く傷ついていた。勉強ができて要領もよい妹と比較され、偏差値や学校の知名度も高くはなかった。自分に自信が持てない僕に祖母は「ダメな子じゃないよ、自信を持ちなさい」「偏差値なんて関係ない」と電話でいつも励ましてくれた。そしてKP21の第三の大人たちと出会い、子どもと関わるアルバイトを経て、大学卒業後は保育専門学校へ進むと決めた。僕の仕事は、子どもたちの居場所を守ることだと思うからだ。
たっぴーのわくわくエンジン:自分の達成感を感じながら、誰かのために動くこと
KP21が大切にしている「わくわくエンジン」® とは?
わくわくして動き出さずにはいられない原動力のことです。一人ひとり全員にわくわくエンジンがあるのです。子どもが自分を知り、自分のわくわくエンジンを発見する。「わくわくエンジン」がわかると、エネルギーの行き先がわかるようになる。自分から動いていけるようになるのです。
パネルディスカッション:
産学官NPOが地域協働でつくるこれからの人材育成とは?
〈パネラー〉
真坂 淳
BNPパリバ銀行の投資銀行本部部長。日本学生社会人ネットワーク(JSBN)代表。
大木浩士
博報堂CSRグループ・CSRプロデューサー。H-CAMP発足者。
橋本賢二
経済産業省経済産業政策局産業人材政策室室長補佐。
坂倉杏介
東京都市大学都市生活学部准教授。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師。
〈コーディネーター〉
朝山あつこ 認定NPO法人キーパーソン21代表理事
失敗してもナイストライ!自己肯定感を育てよう
朝山:真坂さん、日本の子どもたち、日本の人材の課題について、JSBN の活動とも関連してお聞かせいただけますか。
真坂:僕は日本と海外の銀行の世界で通算 27 年働いています。JSBN は自然体でできることをやろうと思い、イケてる、かっこいい、活き活き生きている大人たちを教育の現場に連れていってあげたいと思ったのがきっかけです。今日の学生たち、自己肯定感がすごく高い。あれだけしゃべれる大学生はなかなかいない。アメリカで子育てをしたとき感じたことなんですが、アメリカの親たちはこっちが恥ずかしくなるぐらい子どもをほめます。「あなたはなんて素敵なの!」失敗しても「ナイストライ!」と。一方日本人社会の親たちは、ほめることより「ちゃんとしつけしている」ことを他人に見せたい。それが大きい違いだと思うんです。僕は自己肯定感がすべての原点だと思う。自己肯定感を高く持ってもらうために、親の一言とか、あるいはどんな大人と接点を持っていくのかは、とても重要だと思うんです。
朝山:学生たっぴーの話にもありました。子どもの成長に関わる周りの大人たちが子ども
可能性を潰しているってことが、あると思うんですよね。
真坂:自分を振り返るとね、反省。もっと褒めてあげたい。今ここに来たら、絶対ほめる。
(笑)
朝山:失敗しても「ナイストライ」って親が言ってあげられるのって、いいですね。
粒ぞろいより粒違いがいい
朝山:大木さん、この度は、経産省キャリア教育アワード大賞を受賞おめでとうございます!会社の風土や H-CAMP の話などお願いします。
大木:博報堂は「粒ぞろいより粒違い」っていう人材育成の方針を持っているんです。会社に CSR の部署ができたのは 7~8 年前。僕は役員に提案して中学生、高校生を対象にした教育プログラムを 4 年前に会社として立ち上げました。発想のコツとか、考える楽しさとか、そんなものを伝える。そしてこのほど受賞させていただいたんですが。子どもたちに対して発想のコツとか考える楽しさ、個性の大切さとかを伝えるものです。僕は 1 年間に全国の 3000 人ぐらいの中高生に会っています。
朝山:発想を形にし、市場を作っている、イノベーションを起こしている会社ですね。妄
想できたり想像できたりする力ってすごく大切だろうと思われている。
大木:そうですね。全然触れ合ったことのない僕らのような世界の大人と出会うことによって、思考の枠が外れるとか、自由に妄想していいんだよ、常識ぶっ壊そうよみたいなところからアプローチしたいなと思っているんです。
朝山:粒ぞろいより粒違い、いいですね。同じじゃないことが大事という。
大木:会社的には、新しいね、斬新だねとか、バカだね~とかが誉め言葉ですね。アイデ
アで笑いが取れないとダメ。(笑)
朝山:笑い大事です!粒ぞろいより粒違い。今日の一つのキーワードだと思います。
キャリア教育アワードが意図するもの
朝山:経産省の橋本さん、日本の人材の実態とか課題、なんでキャリア教育アワードなの?国って何考えてるかを、小学生にもわかるようにお話しいただけますか。
橋本:経産省、文科省の方向性は、簡単に言うと日本の人材は閉じこもっているな、枠にはまりすぎているぞという課題意識で一致しているんです。だから、2020年から学校の先生の虎の巻、学習指導要領を大きく変えるんですね。経産省では、産業界はもっともっと教育に入っていく必要があるよと10年前から言っていたのに10年前のキャリア教育はなかなか浸透していなかった。そこでアワードのように、頑張っている企業やNPOを表彰することを始めたんですね。ようやくキャリア教育が脚光を浴びてきて、改訂される学校指導要領でもキャリア教育というのは軸になりますし、文科省とタッグを組んで、官民連携していろんな教育を仕掛けていこうとしているところです。これはまだ解がわからないのですが、このような場面で良心的な大人が一生懸命地域に関わっていくことが重要なんじゃないかと思うんです。
ワクを飛びこえよう!
朝山:閉じこもってるぞみんな、ワクを飛び出せと言いたい感じなんですね、国としても。
橋本:ワクにはまっている公務員が言ってます。(笑)
朝山:その施策として、キャリア教育アワードで、学校だけで育てるのではなく一緒に育ててくれる企業を表彰しようという意図があったんですね。
橋本:既成概念にとらわれていてはだめですよ、常識とか当然というものを疑ってください、そういう学びをしてくださいということですね。
朝山:今ある世界が延々と続くわけじゃないし未来は見えないから、まず一歩踏み出して学んでいけということですね。
橋本:未来に向かう学びもそうですが、現在、過去の学びもそうです。わからないものを分かるように努力していく。そのために学びはもっと社会に飛び出たものになっていく。そこからイノベーションが生まれてくるんじゃないかと。
朝山:そうですよね。そこから経済活性が起きてくるんですね。ありがとうございます。
インフォーマルな学びが起こす自分イノベーション
朝山:坂倉先生は、地域コミュニティのご専門のお立場からの取組みをなさっています。
坂倉:地域コミュニティづくり、つまり住んでいる人同士の関係が深まることによって新しくいろんなことが起こったりとか、住んでいる一人一人の安心感、幸せの実感が増える。基本的なつながりをつくることによって社会を変える。そういうことが専門です。代表的な仕事の一つが慶応大学にいるときに取り組んだ港区の「芝の家」です。そこを拠点にいろんな産学のつながりが展開されています。
学びは分かりやすく対立させると、制度的なフォーマルな学びとインフォーマルな地域の中の学び、設計された学習と自分で偶然手にする学習に分けられます。私の実感では、圧倒的にインフォーマルな学びが強いかなと思うんです。それは地域力というか、偶然が起こるゆとりとか、目先でいいことが起こるかどうかわからないがチャレンジできる、そういう学びです。コミュニティ政策の現場で感じるのは、上からの都合で押し付けられるものとのギャップです。学びの分野でもそうですが、全国一律守らせたい、クォリティをキープして実績を作りたいという行政のやり方は、本当に学びたい人を目の前にして、現場で人に寄り添っているのかというと疑問です。
朝山:地域のコミュニティにおいても、フォーマルとインフォーマルの駆け引きがまだうまくいっていない感じなんでしょうか。
坂倉:そうですね。コミュニティって自発的に人とつながろうとか主体的に町に関わろうというアクションであるべきですよね。学びも同じで、自分から育ちたい力を自分で後押ししていく、周りもそれを見守るということじゃないと。
朝山:そこに「わくわくエンジン」ですね。言われたから踏み出すんじゃなくて、自分が踏み出したいから踏み出すみたいな感覚。
坂倉:大学って均質的な空間で、その環境だと芽が出ない子もいっぱいいる。でも違う土、違う水の中でなら芽が出る。いろんな機会にトライできる環境が必要です。キーパーソン 21 がやっていることは大学の立場からもとても重要なんです。
いろんな刺激と経験でゲ・キ・ヘ・ン!
朝山:ありがとうございます。では真坂さん、父親としてのご経験を。
真坂:上の子どもがシンガポール生まれのニューヨーク育ちで。グローバルに活躍してほしいと思って現地校に通わせたんです。ところが日本に小学校 4 年生で帰ってきて、国語の偏差値 32。三行以上の長文が読めないから、論理的な思考ができず算数も社会も全部だめでした。可愛そうなことをしたと思った。中学受験をどうにか乗り切り、高校では模擬国連部に入りました。そうこうするうちに高校 2 年で部長やれって言われたよと。そして全国大会で最優秀賞、ニューヨークの国連で開かれた世界大会ではなんと準優勝でした。何が変貌のきっかけだったか聞くと、学校の先生、仲間、そして私がボランティアの活動でいろんな大人を家に連れてきていたんですが、その人たちからすごい刺激をもらったというんです。いろんな刺激、いろんな経験をさせるってすごく大事なんだなということをすごく感じたんでお話ししました。
朝山:素晴らしいです。偏差値は一つの尺度に過ぎない。、どんな子にも未来がある。その子を伸ばすスイッチを発見する力、関わる力が大人側にあるかということですよね。
真坂:今世界を豊かにしたいとカンボジアに行っています。そういうことに火がついちゃったんですね。
朝山:すごい。志を持ったんですね。それはインフォーマルで学んだことなんですね。 真坂:朝山さんがよくおっしゃる第三の大人の力ですね。
朝山:子どもの可能性をつぶさない。一人ひとりを社会全体で育てるという、素晴らしい実現の例ですね。ありがとうございます。
見極め、背中を押し、つなぐ役目
朝山:橋本さん、激しくうなずいていらっしゃいましたね。(笑)
橋本:これまでの議論、まったく同意しています。枠を作ることが仕事の役人に枠を超えろと言わせないで(笑)という意見もあるんですが、第三の大人、まさに同感です。イノベーションって結局組み合わせで、既存のものから誰がうまく組み合わせて新しい価値をつくるかということですよね。組み合わせや可能性に気が付くことが大切です。フォーマルな場で基礎学力の向上をしっかりさせることはもちろん必須項目なんですが、それだけではだめで、インフォーマルな場でいろんな刺激をいろんな人から受けて自分に合うものを見つけて、その子の個性を伸ばすことが重要になってくるんじゃないかと思います。
朝山:大人の力が問われますよね。一人一人の力を見極めることが教員に求められるよう
になってきますね。
橋本:見極めもですが、本人のやりたいことをいかに引き出すかということも大切。今日の学生たちは自分と見つめ合うことをしていて、それをちゃんと言語化しているから自分の強みは何だとか、弱みもわかっている。それを小さいうちから体験させて、挑戦を後押しするとか、才能の芽があるならやってみないと背中を押してあげる、逆に失敗したらなんで失敗したんだろうねと寄り添うことですね。これから先生に求められるのは押し付けたり枠にはめたりすることではなくて、見極めて後押ししてあげること。第三の大人に必要なのも、自分をモデルにしたり、自分と近い人を紹介してあげるようなつなぎの役ですね。
やらされ感ゼロのわくわく大人に出会う
朝山:その大変な役を全部先生一人に押し付けたら、先生はつぶれてしまいますよね。インフォーマルな場で第三の大人の働きをされている大木さん、いかがですか。
大木:実は僕も苦労していて、H-CAMP に参加する中高生はこっそり一人でやってくる。友達に知れると「意識高い系だね」ってレッテルを貼られるのが嫌だというんです。学校に頼みに言ったら「忙しいんだから仕事増やさないで」と怒られ、行政に行っても同様。でもそんな中必要だと思っているから、自力で栃木県で立ち上げた高校生プロジェクトで商品開発したりもしている。第三の大人というのは簡単だけど、いろんな大人のいろんな立場があって大変だなあと。キーパーソンさんすごいです。
朝山:ほめていただいてありがとうございます。今日の学生たちの発表も、初めから一人で話せるようになったんじゃなくて、今日もドキドキだったわけなんですよ。会員の大人たちが毎日毎日寄り添ってフォローしているんです。大人たちは、別に子どものためにというんじゃなくて、自分が楽しいからやってると言ってくれます。こんな、やらされ感じゃないところで物事をやるという風土を、日本のコミュニティも、学校も、家庭も作っていく必要があるんじゃないかなと思っているんです。
職業を、目的ではなく手段にする
真坂:素晴らしいですね。全く同感です。JSBN の活動では、イケてる大人たち 30 人ぐらいで高校でキャリア教育の出張授業を続けていて、公式な授業にも取り入れられるほど好評です。最初高校生に「大人のイメージどう?」ってアンケートを取ると、7,8割ネガティブな答えが返ってきます。「黒い」とか「社畜」とか。目を向けられないようなワードが並ぶんです。それって我々大人の責任だよね、と仲間と話します。激動の世の中、今までの常識が常識じゃない時代。じゃあ我々は何を目指したらいいんだろうと JSBN の人たちと議論を重ねて出た答えは、学歴じゃない、肩書じゃない。「どこに行っても、何が起こっても、いきいきと生きて行ける、知恵と強さとしなやかさを持つ、ピンで立つ人」。僕らはこれを目指そうと言ってます。
それから、高校生たちに「あなたの夢は何ですか」と聞くと「弁護士」とか「医者」とか職業を答えます。彼らが、職業の先にあるものが見えていないという点を、我々は問題意識として持っています。どんな人になりたいか。生涯かけてやり遂げることは何か。どんな世の中をつくりたいか。この三つが見えていれば、職業というのは手段になるんですね。これは学校教育だけでは見えてこない。若い時に多様性の価値観のあるいろんな大人たちに会うことが非常に価値があるなと思っています。
朝山:まさに、キーパーソンがわくわくエンジンというのをやる理由がそれです。職業は、なぜなりたいかの理由がはっきりわかっている子といない子との差が、ものすごく大きい。例えば医者ならどんな医者に、どうしてなりたいのか。それが志に変わって、生涯かけて成し遂げたいことが見えてくる。見えている子は強い、折れないんです。それがわくわくエンジンの働きです。
マッチョ VS ゆるふわで地域コミュニティ創造
朝山:時間が迫ってきてお名残り惜しいのですが、坂倉先生がおっしゃったことで「マッチョ的地域づくり」という言葉が面白いなと思っていまして、もうひとつ対照的なご近所ネットワークでしたか、この二つの言葉について教えていただきたいのです。
坂倉:マッチョ的な町づくりというのは従来の比較的大きな町づくりや、町内会とか青年会とかがやっている観光イベントのような、義務的に「イベント成功させよう」「何千人呼ぼう」というやりかたのことです。そうじゃない、自分がこの地域でどういう人生を送りたいのかということを軸にして、住民がゆっくりと対話しながら、枠をあてはめないで、実現できるところからやっていこうというのが、本当の意味で主体的な地域づくりですよね。マッチョに比して、ゆるふわな町づくりと言ってますが。
朝山:今日来た学生たちって、自分の中から湧き出てくるものを引き出して、自分でこうしたいというところまで持っていってる。地域づくりもそこからスタートするということに通じますでしょうか。
坂倉:そうですね、どっちがいいというのではなくて両方必要なわけです。従来の地域活性というのは暗黙的に経済的成長というのが織り込まれていたんだけれども、そこに住む人の一人一人の主観的な幸せも地域活性と言っていいんじゃないかという議論がやっと出てきたんです。
朝山:そうですね。お父さん的な地域活性とお母さん的な地域活性、両方必要ということですね。いきいきと生きる大人が増え、子どもが失敗して帰ってきたときに「ナイストライ」と言ってあげられる大人でありたいですね。
この後、パネラーの皆さんからわくわく学生創出のキーワードを発表していただきました。
真坂: 人生をいきいき生きる 3 つのコツ(ドリュー・ヒューストンの言葉から)
①テニスボール(わくわくするもの)
②コミュニティー(学びの宝庫)
③30000 日(自分の人生)
大木:楽しさを入り口に
橋本:第三のおとなによる真面目な圧力
坂下:安心して失敗できる場
まさに人材育成の日本の最先端におられる方々からライブなお話が伺えるという、とても貴重な機会となったパネルディスカッションでした。
グループディスカッション:あなたもキーパーソンになろう!
しめくくりに参加者が 20 テーブルに分かれ、学生やパネラーを交えて語り合う時間が持たれました。
テーマは3つ。
テーマ①つぶされそうになった経験・つぶしそうになった経験
テーマ②子どもが可能性を伸ばしながら未来を生きていくためにはどんな力が必要と思いますか。
テーマ③あなたは何ができそうですか。
参加者は小学生から80歳まで。グループで1枚、大切と思うキーワードを紙に書いて、数グル ープが発表しました。このときの一番バッターが小学6年男子。「世間にどう出しても通用する子どもを作りたい親から、雰囲気でつぶされそうになった」という経験談に大人たちも大いに同感。そのキーワードは「雰囲気」でした。続いて「正解より納得解」「失敗してもいいんだよ大丈夫」「ゆるい情報」「第3の場所」「ど根性」など、皆さんの意見発表が続き、盛り上がりのうちに閉会の時間を迎えたのでした。
キャリア教育を自分ごととして学び、考え、語り合った一日。
ご参加くださった皆さん、お疲れ様でした。
そしてありがとうございました!
キーパーソン21では、全国の大学などと連携して「わくわくエンジン」発見のサポート、キャリア教育プログラムの実施、わくわくナビゲーターの養成、地域ネットワークの構築をお手伝いしています。
参加者へのアンケート結果
(回答 49 名中:満足~大変満足 47 名、まあまあ 1 名、満足度未回答 1 名)
=コメントより抜粋=
本日のイベントについて
・学生の発表がとても素晴らしかったです。自分と同世代の方々が何気ないことをきっかけに変わることができたと知り本当に良かった。
・パネルディスカッション、グループディスカッションで参加者の熱い思いを感じてとても刺激になりました。社会は、未来は、これから皆でつくて行くんだなと改めて希望を感じました。
・ やりたいことを言語化し、自分の言葉で伝えることの大切さを感じました。
・ 昨年に引き続き参加させていただきました。第三の大人の力を必要性をより強く感じました。
・昨年に引き続き参加させていただきました。第三の大人の力を必要性をより強く感じました。自分の人生は自分自身でデザインする、俺は俺、あなたはあなたの心意気が大事だと思いました。
・学生さんの積極的な発表に大変元気づけられました。教育には門外漢ですが何かできればいいなあと思いました。
子どもの可能性をつぶさないために、あなたは何ができそうですか。
・ 多くの経験をさせたい!話を聞きます。一歩を踏み出します。
・ 一人一人が思いを持ち夢があふれた社会を作るために身近にいる人の想いに向き合い、思いを生み出して形にする場を作る。
・価値観を固定しない話し方をする。